治療は必要なのに、窓口で払うお金が用意できない。あるいは、届いた請求書の金額を見て、支払いのめどが立たない。そんなとき、受診をやめてしまう方がいます。けれど、病気を放置すると治療はより大がかりになり、結果として費用も体の負担も大きくなります。
医療費が払えないときに使える制度や、支払いを待ってもらう方法はいくつもあります。どれも「申し出ないと始まらない」ものばかりです。
このページでは、医療費の支払いが難しいときにできることを、順番に整理してご紹介します。
1. 導入:まず知っておきたい5つの方法
| 方法 | どんなときに対象になるか | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 限度額適用認定証・マイナ保険証 | 入院・手術の予定があるとき | 窓口での支払いをはじめから上限額までにできる |
| 高額療養費の貸付制度 | 払い戻しを待つ間のお金が足りないとき | 支給見込額の8割程度を無利子で借りられる |
| 分割払い・支払いの猶予 | 一度に払えないとき | 病院の相談で、分割や待ってもらえることがある |
| 無料低額診療事業 | 収入が少なく、支払いが難しいとき | 実施している医療機関で、無料または低額で受診できる |
| 一部負担金の減免 | 災害・失業などで一時的に生活が苦しいとき | 窓口負担そのものが減免されることがある |
医師の視点総合診療医のひとこと
お金のことを医師に言い出しにくい、と感じる方は多いと思います。けれど私たちは、費用を理由に治療が中断されることをいちばん心配しています。「実は支払いが厳しい」と一言伝えてもらえれば、より安い薬に変えられないか検討したり、院内の相談窓口につないだりできます。受診をやめる前に、必ず声をかけてください。
― “おせっか医”になりたい大学病院総合診療科・家庭医専攻医
2. 支払う前にできること
窓口での支払いを、はじめから抑える
- マイナ保険証を使う、または限度額適用認定証を提示する:1か月の窓口負担が、所得に応じた上限額までになります。入院や高額な外来治療の前に準備しておきましょう(高額療養費シミュレーターで、上限額の目安を計算できます)
- 住民税非課税世帯の方は、あわせて食事代の減額も:「限度額適用・標準負担額減額認定証」で、入院中の食事代も下がります
- 院外処方の薬代も確認を:薬局での支払いも高額療養費の対象です。同じ月の医療機関の分と合算できます
3. すでに請求が来ているとき
分割払い・支払いの猶予
多くの医療機関では、事情を説明すれば分割払いや支払い時期の相談に応じています。まずは会計・医事課の窓口か、医療ソーシャルワーカーに相談してください。放置して督促が続くと相談しにくくなるため、早いほど選択肢が残ります。
高額療養費の貸付制度
高額療養費は、申請してから振り込まれるまで数か月かかります。その間の支払いに困る場合、加入している健康保険から支給見込額の8割程度を無利子で借りられる制度があります(協会けんぽ・健保組合・国民健康保険などで名称や割合が異なります)。
一部負担金の減免・猶予
災害、失業、事業の休廃止などで収入が著しく減り、生活が困難になった場合、窓口負担(一部負担金)そのものを減免したり、支払いを猶予したりする制度があります。国民健康保険なら市区町村、勤務先の健康保険なら加入する保険者が窓口です。
4. 無料低額診療事業
社会福祉法に基づき、生計が困難な方が無料または低額で診療を受けられる事業です。実施している病院・診療所が全国にあり、生活保護を受けていなくても利用できます。
- 収入の基準や減免の割合は、医療機関ごとに決められています。まずはその医療機関の相談室に問い合わせてください
- 実施している医療機関は、お住まいの都道府県や市区町村のホームページで「無料低額診療事業」として公表されています
- 院外処方の薬代は対象外になることが多い点に注意が必要です(自治体によっては、薬代を助成する独自の制度があります)
5. 保険料が払えないとき
国民健康保険料を滞納すると、有効期間の短い保険証(短期被保険者証)や、窓口でいったん全額を払う「資格証明書」に切り替わることがあります。こうなる前に、市区町村の窓口へ相談してください。
- 所得の減少や失業に応じた保険料の軽減・減免が受けられることがあります
- 会社を辞めた方(特定受給資格者・特定理由離職者)は、前年の給与所得を30%として計算する軽減があります
- 分割納付の相談もできます。「払えないから連絡しない」がいちばん不利になります
6. 生活そのものが苦しいとき
- 生活困窮者自立支援制度:市区町村の自立相談支援機関で、家計や仕事の相談ができます。家賃が払えないときは「住居確保給付金」を利用できる場合があります
- 生活福祉資金(社会福祉協議会):一時的に生活費が足りないときに、無利子または低い利子で借りられる制度です
- 生活保護:生活費の支給に加えて、医療費の自己負担がなくなります(医療扶助)。持ち家や車があっても対象になる場合があります。窓口はお住まいの地域の福祉事務所です
収入が途絶えている場合は、傷病手当金や障害年金などの制度もあわせて確認しましょう。「働けなくなったときの制度の使い方と順番」で解説しています。
困ったときの相談先
- 病院の医療ソーシャルワーカー(医療福祉相談室・患者支援センターなど):支払いの相談、制度の紹介、申請の手伝いまで、まとめて相談できます。無料です
- 病院の会計・医事課の窓口:分割払いや支払い時期の相談、限度額適用認定証の案内
- 加入している健康保険:高額療養費、貸付制度、一部負担金の減免の窓口です
- 市区町村の国民健康保険の窓口:保険料の軽減・減免、分割納付の相談
- 都道府県・市区町村のホームページ:無料低額診療事業を行っている医療機関の一覧
生活費が立ち行かないときは、お住まいの市区町村の自立相談支援機関や福祉事務所にもご相談ください。困ったときに使うための制度があります。
7. 状況に合う制度を、制度チェック・LINEで確認してみませんか
当サイトの「制度チェック」では、2つの質問にタップで答えるだけで、状況に合いそうな制度と相談先をご案内しています。制度チェックはこちら。
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8. 免責事項
- 本記事は、医療費の支払いが難しいときに対象になる可能性がある制度を、一般的な情報として紹介するものです。個別の可否や減免額を保証するものではありません。
- 要件や手続きは、加入している健康保険、お住まいの自治体、医療機関によって異なります。必ず各窓口にご確認ください。
- 本記事は医学的な診断・治療方針に関する助言を目的としたものではありません。
- 制度の内容は法改正等により変更される場合があります。記事内の情報は最終更新日時点のものです。
出典・参考情報
- 厚生労働省「無料低額診療事業について」
- 厚生労働省「一部負担金の減免制度」「国民健康保険料(税)の軽減・減免」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額医療費貸付制度」
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」「生活保護制度」

