親が倒れた、認知症の症状が進んできた――家族の介護は、ある日突然始まることが少なくありません。病院への付き添いや介護サービスの手続きが重なり、「このままでは仕事を続けられない」と感じる方も多いはずです。
実は、介護のために仕事を休んだり、働き方を調整したりすることは、法律で認められた権利です。休業中の給付金もあります。ところが、制度を知らないまま介護離職を選び、収入や年金の面で大きな負担を抱えてしまうケースも少なくありません。
このページでは、介護と仕事を両立するために知っておきたい公的制度と、辞める前に確認したいことをご紹介します。
1. 導入:まず知っておきたい両立支援の制度
| 制度名 | どんなときに対象になるか | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 介護休業・介護休業給付金 | 家族の介護のため、まとまった期間休むとき | 通算93日まで休め、賃金のおよそ67%が支給される |
| 介護休暇 | 通院の付き添いや手続きなどで休むとき | 年5日(2人以上なら10日)、時間単位でも取れる |
| 短時間勤務・残業の制限など | 介護しながら働き続けるとき | 勤務時間の短縮や残業の免除を会社に求められる |
| 介護保険サービス | 要介護認定を受けた家族の介護 | 原則1〜3割の負担でプロの手を借りられる |
医師の視点総合診療医のひとこと
入院中の家族の退院が近づくと、「退院したら自分が付きっきりで見なければ」と考えて、急いで仕事を辞めようとする方がいます。けれど実際には、退院前に要介護認定の申請とケアマネジャーの手配を済ませ、介護休業を使って体制を整えることで、仕事を続けられることが多いです。退院の話が出たら、まず病院の医療ソーシャルワーカーに声をかけてください。
― “おせっか医”になりたい大学病院総合診療科・家庭医専攻医
2. 介護休業と介護休業給付金
介護の「体制づくり」のための休み
要介護状態(負傷、病気、障害などで、2週間以上にわたって常に介護が必要な状態)にある家族を介護するために、まとまった期間休める制度です。
- 対象の家族:配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
- 期間:対象家族1人につき通算93日まで。3回まで分けて取れます
- 申し出:原則、休業を始める2週間前までに会社に申し出ます
介護休業給付金
雇用保険に加入している方が介護休業を取ると、ハローワークから休業前の賃金のおよそ67%が支給されます(上限額あり)。原則として、休業を始める前の2年間に、賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月が12か月以上あることが条件です。
3. 介護休暇・働き方の調整
介護休暇
通院の付き添い、ケアマネジャーとの打ち合わせ、役所の手続きなど、短い用事のための休みです。対象家族1人につき年5日(2人以上なら年10日)まで、時間単位でも取れます。有給か無給かは会社の規定によります。
働き方を調整する制度
- 残業の免除(所定外労働の制限):介護が終わるまで、残業をしないよう会社に求めることができます
- 時間外労働・深夜業の制限:残業を月24時間・年150時間までにすることや、深夜(午後10時〜午前5時)の勤務をしないことを求められます
- 短時間勤務など:会社は、短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤などのうちいずれかの制度を、利用開始から3年以上の間に2回以上使えるように設けなければなりません
2025年4月からの見直し
- 従業員から介護に直面したと申し出があった場合、会社は両立支援制度を個別に知らせ、利用の意向を確認しなければなりません
- 40歳になったときなどに、介護の両立支援制度を早めに知らせることも会社の義務になりました
- 介護のためのテレワークが、会社の努力義務になりました
- 勤続6か月未満の方を介護休暇の対象から外す労使協定の仕組みが廃止されました
4. 介護保険サービスで負担を分ける
仕事を続けるためには、家族だけで抱え込まず、介護保険のサービスを使うことが欠かせません。
- 要介護認定:市区町村に申請し、結果が出るまで原則30日かかります。入院中から申請できます
- 主なサービス:訪問介護、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所)、福祉用具のレンタル、住宅改修など。自己負担は原則1〜3割です
- 高額介護サービス費:1か月の介護サービスの自己負担が上限を超えた分が戻ります
- 高額医療・高額介護合算療養費:医療と介護の両方の自己負担が1年間で一定額を超えると、超えた分が戻ります
サービスの組み合わせはケアマネジャーが計画してくれます。「仕事を続けたい」という希望は、最初にはっきり伝えておきましょう。朝早くや夕方遅くの時間帯に対応できる事業所を選ぶなど、働き方に合わせた計画を立ててもらえます。
介護にかかる税金の負担を軽くする制度(要介護の家族の障害者控除対象者認定、同居の親の扶養控除など)もあります。くわしくは「認知症・介護で使える公的支援制度まとめ」「在宅療養で使える公的支援制度まとめ」もご覧ください。
5. 仕事を辞める前に確認したいこと
介護離職は、収入が途絶えるだけでなく、厚生年金の加入期間が短くなって将来の年金が減る、再就職が難しくなるなど、長い目で見て大きな影響があります。辞めるかどうか迷ったら、次の点を確認してみてください。
- 介護休業・介護休暇・短時間勤務などを、まだ使える余地はないか
- ケアマネジャーに「仕事を続けたい」と伝え、サービスの組み合わせを見直したか
- 兄弟姉妹など、ほかの家族と役割を分担できないか
- 会社の人事担当に、両立支援制度や社内独自の制度を確認したか
それでも辞めることになったら
- 失業給付:家族の介護のための退職は、正当な理由のある離職(特定理由離職者)として扱われることがあり、その場合は給付制限がかかりません。離職票の離職理由を確認し、ハローワークで相談しましょう
- 健康保険:任意継続(退職日の翌日から20日以内に申請)、国民健康保険、家族の扶養のいずれかに切り替えます
- 年金:国民年金に切り替わります。収入が減った場合は、保険料の免除・猶予を確認しましょう
手続きの期限や順番は「働けなくなったときの制度の使い方と順番」でも解説しています。
困ったときの相談先
- 勤務先の人事・総務担当:介護休業・介護休暇・短時間勤務などの社内の手続きを確認できます
- ハローワーク:介護休業給付金の窓口です(申請は通常、会社を通して行います)
- 地域包括支援センター:介護の総合相談窓口です。要介護認定の申請や、仕事と両立するためのサービスの相談ができます
- ケアマネジャー:介護サービスの計画と調整を担当します。仕事の時間に合わせた計画を相談しましょう
- 病院の医療ソーシャルワーカー:入院中の家族の退院後の生活について、退院前から相談できます
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):介護休業などを理由とした不利益な扱いの相談先です
生活費が立ち行かないときは、お住まいの市区町村の自立相談支援機関や福祉事務所にもご相談ください。困ったときに使うための制度があります。
6. 状況に合う制度を、制度チェック・LINEで確認してみませんか
当サイトの「制度チェック」では、2つの質問にタップで答えるだけで、状況に合いそうな制度と相談先をご案内しています。制度チェックはこちら。最初の質問で「家族の介護と仕事の両立」を選んでください。
公式LINEでも、在宅療養や認知症・介護について、状況に合わせた制度をご案内しています。友だち追加後、画面下のメニューから「すべて見る」→「お困りごとから探す」をタップすると始まります。
あなたに合いそうな制度をLINEでチェック
友だち追加はこちらご案内する内容は制度の一般的な情報であり、実際に対象になるかどうかは個別の状況によって異なります。詳しい条件は、記事本文および各制度の窓口でご確認ください。
7. 免責事項
- 本記事は、介護と仕事の両立に関係する代表的な公的制度を、一般的な情報として紹介するものです。個別の受給可否、支給額を保証するものではありません。
- 介護休業・介護休暇などの取り扱いは、勤務先の就業規則や雇用形態によって異なる場合があります。必ず勤務先・ハローワーク・市区町村の窓口にご確認ください。
- 本記事は医学的な診断・治療方針、退職の判断に関する助言を目的としたものではありません。
- 制度の内容は法改正等により変更される場合があります。記事内の情報は最終更新日時点のものです。
出典・参考情報
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」「令和6年改正法(令和7年4月1日施行)の概要」
- 厚生労働省・ハローワーク「介護休業給付について」
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」

