ほてり、めまい、動悸、気分の落ち込み、強い倦怠感——更年期障害の症状は人によってさまざまで、その辛さが周囲になかなか理解されにくいという声もよく聞きます。「年齢的なものだから仕方ない」と我慢してしまい、通院や治療のタイミングを逃してしまう方も少なくありません。
更年期障害は、婦人科・更年期外来などで適切な治療を受けることで症状が和らぐことが多い、れっきとした「病気」です。そして、通院や休職に伴う経済的な負担を軽くする公的支援制度も、他の病気と同じように使うことができます。
このページでは、更年期障害の症状で通院している方、休職を検討している方が対象になりうる代表的な3つの制度をご紹介します。
1. 導入:まず知っておきたい3つの公的支援制度
| 制度名 | どんなときに対象になるか | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 症状がつらく、休職するとき | 給与のおよそ3分の2が最長1年6か月支給される |
| 高額療養費制度 | 1か月の医療費が高額になったとき | 自己負担に上限が設けられ、超えた分が戻る |
| 医療費控除 | 1年間の医療費が一定額を超えたとき | 確定申告で税金の一部が還付される |
「更年期障害だから対象外」ということはありません
会社員のBさんは、めまいと強い倦怠感が続き、婦人科を受診したところ更年期障害と診断されました。症状が重く、しばらく休職することになりました。
・休職中:会社からの給与が止まったため、傷病手当金を申請。給与のおよそ3分の2にあたる金額が支給されました。
・通院を続けるうち:ホルモン補充療法や複数の検査が重なった月の医療費が高額になったため、高額療養費制度でその月の超過分の払い戻しを受けました。
・確定申告の時期:1年間の通院費・薬代・通院交通費を合計したところ10万円を超えていたため、医療費控除を申告し、税金の一部が還付されました。
「更年期障害は病気ではないから制度が使えないのでは」と思われがちですが、そうではありません。これらの制度は病名を限定するものではなく、医師が労務不能と判断すれば傷病手当金の対象になり、通院にかかった医療費であれば高額療養費制度や医療費控除の対象にもなります。
医師の視点総合診療医のひとこと
ほてりや気分の落ち込みは、甲状腺の病気やうつ病などでも起こります。まずは一度受診して、ほかの病気が隠れていないかを確かめることが、結果的に治療費も時間も節約する近道です。
― “おせっか医”になりたい大学病院総合診療科・家庭医専攻医
2. 傷病手当金
症状がつらいときの休職を支える「傷病手当金」
更年期障害の症状が重く、仕事を続けることが難しいと感じたとき、まず気になるのが「休んだら給与はどうなるのか」という点です。ここで支えになるのが傷病手当金です。
どんな制度か
業務外の病気やケガによって働けなくなった方に対し、加入している健康保険から生活費の一部が支給される制度です。更年期障害も、他の病気と同じように対象になり得ます。
対象になる条件
以下の4つをすべて満たす必要があります。
- 更年期障害の症状により、仕事に就くことができない状態であること(医師が労務不能と判断すること)
- 連続して3日間休んだ(この3日間は「待期期間」と呼ばれ、支給対象外)うえで、4日目以降も休んでいること
- 休んでいる期間について、会社から給与の支払いがないこと(一部支払いがある場合は差額調整)
- 協会けんぽや健康保険組合など、対象となる健康保険に加入していること
診断書は必須ではありません
傷病手当金の申請書には、本人の記入欄・事業主の証明欄に加えて「医師の意見欄」があり、そこに主治医が労務不能と判断した期間等を記入します。別途、診断書を用意する必要は原則ありません。「診断書がないと申請できないのでは」と誤解して申請をためらってしまう方もいますが、まずは通院先の医師に相談してみることをおすすめします。
いくらもらえるか
1日あたりの支給額は、次の計算式で決まります。
支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3
これがひと月続けば、給与のおおむね3分の2程度が目安になります(実際は暦日数・休業日数により変動します)。支給される期間は、通算で1年6か月までです。
申請の流れ
- 「傷病手当金支給申請書」を、加入している健康保険(協会けんぽの都道府県支部、または健康保険組合)から入手する
- 申請書には3者の記入・証明が必要(本人記入欄、事業主の証明、医師の意見)
- 提出後、おおむね10営業日〜数週間ほどで初回の振込が行われるのが目安(健保組合や書類の状況により前後します)
- 長期療養の場合、1か月単位で継続申請を行うのが一般的
実務上の注意点
- 更年期障害は治療によって症状が改善しやすい病気でもあります。最終的な労務不能の判断は、通院先の医師と加入する健康保険組合によるため、まずは主治医に率直に体調を相談することが第一歩です
- 退職後であっても、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職時点で傷病手当金を受給中(または受給できる状態)であれば、退職後も引き続き受給できる場合があります
傷病手当金はいくらもらえる?
傷病手当金かんたん計算で確かめる3. 高額療養費制度
治療費が高額になった月を支える「高額療養費制度」
更年期障害の治療は、ホルモン補充療法や漢方治療、各種検査など、通院を続ける中で医療費がまとまることがあります。そんなときに頼りになるのが「高額療養費制度」です。特定の病名に限定されない、医療費全般のセーフティネットです。
どんな制度か
同じ月(1日〜末日)に支払った医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。入院・外来を問わず、保険診療であれば対象になります。
自己負担の上限はどのくらいか
上限額は年齢と所得区分によって段階的に決まっています。2026年8月の見直しで上限額が引き上げられ、たとえば70歳未満で年収がおおよそ370万〜770万円の一般的な区分では、1か月の自己負担上限は「85,800円+(医療費−286,000円)×1%」(改定前は80,100円+…)、月あたりおおむね9万円前後が目安です。過去12か月以内に上限額に達した月が3回以上あると4回目からは44,400円に下がり(多数回該当)、8月〜翌年7月の1年間の自己負担にも上限(この区分では53万円)が設けられています。同じ世帯の複数の医療費を合算できる「世帯合算」という仕組みもあります。
申請の流れ(2つの使い方)
- 後から払い戻しを受ける方法:いったん医療機関の窓口で3割分を支払い、後日「高額療養費支給申請書」を加入している健康保険に提出して差額の払い戻しを受ける
- 窓口での支払い自体を抑える方法:事前に「限度額適用認定証」の交付を受けておくことで、窓口での支払いをはじめから自己負担上限額までに抑えられる
マイナ保険証を利用している場合は、限度額適用認定証がなくても、窓口での支払いが自動的に上限額までに調整される仕組みが広がっています。
実務上の注意点
- 加入する健康保険組合によっては、法定の上限額に加えて独自の「付加給付」があり、実際の自己負担がさらに低くなる場合があります
- 高額療養費の払い戻しには申請から数か月かかることが一般的です。急な出費に備えるなら、事前に限度額適用認定証を用意しておく方法をおすすめします
- 漢方薬や一部のサプリメント的な位置づけの製剤など、保険適用外の治療を選択している場合は、その部分は高額療養費制度の対象にならない点に注意してください
4. 医療費控除
確定申告で戻ってくる「医療費控除」
更年期障害の通院は、数か月から年単位で続くことも珍しくありません。1年間の通院費や薬代を合計してみると、思っていたより高額になっていることもあります。ここで見落とされがちなのが「医療費控除」です。
どんな制度か
1年間(1月〜12月)に支払った医療費の世帯合計が一定額を超えた場合、確定申告をすることで所得控除が受けられ、所得税・住民税の負担が軽くなる制度です。
対象になる条件
- 1年間の医療費の世帯合計が10万円を超えていること(所得金額が200万円未満の方は「所得金額の5%」が基準)
- 控除の対象となる医療費は、最高200万円まで
何が対象になるか
- 更年期障害の診療にかかった医療費(診察代、検査費用、処方薬代)
- 通院のための交通費(公共交通機関を利用した場合)
ホルモン補充療法や漢方治療も、保険診療で受けたものであれば対象になります。市販の漢方薬やサプリメントなど、治療目的が明確でないものは対象外になる場合があるため、迷ったときは領収書を保管したうえで税務署に確認するとよいでしょう。
申請の流れ
- 1年間の医療費の領収書・交通費の記録を保管しておく
- 「医療費控除の明細書」を作成する(健康保険から届く「医療費通知」を活用すると集計が楽になります)
- 確定申告の時期(原則2月16日〜3月15日)に、税務署への申告またはe-Taxでのオンライン申告を行う
実務上の注意点
- 医療費控除は、還付申告であれば確定申告の時期を待たずに、1月から申告することも可能です
- 同じ世帯の家族の医療費も合算できます。配偶者・扶養家族の分も忘れずに集計しましょう
- 領収書の提出は不要になりましたが、明細書の作成・保管は必須です。5年間は保管しておくことをおすすめします
困ったときの相談先
- 病院の医療ソーシャルワーカー(医療福祉相談室・患者支援センターなど):通院・入院している病院で、無料で相談できます。どの制度から手をつければよいかを一緒に整理してくれます
- 市区町村の保健センター:女性の健康相談を受け付けている自治体があります
- 勤務先の産業医・人事担当:休職や働き方の調整を相談できます
- 加入している健康保険:傷病手当金・高額療養費の手続きの窓口です
生活費が立ち行かないときは、お住まいの市区町村の自立相談支援機関や福祉事務所にもご相談ください。困ったときに使うための制度があります。
5. あなたに合いそうな制度を、LINEで確認してみませんか
ここまで3つの制度をご紹介しましたが、実際には「自分の場合、結局どれが使えるの?」と迷う方も多いと思います。加入している保険の種類や、現在休職中か、すでに退職されたかによって、対象になる制度の組み合わせは人によって変わってきます。
公式LINEでは、いくつかの簡単な質問にお答えいただくだけで、あなたの状況に合いそうな制度を選んでご案内しています。
- 加入している保険の種類(社会保険/国民健康保険/わからない)
- 現在の状況(休職中/休職していない/退職した)
この2つの質問にタップで答えるだけで、該当しそうな制度をLINEでお伝えします。友だち追加後、画面下のメニューから「更年期障害」をタップすると始まります。「制度を知らないまま権利を使い逃す」ことを防ぐための、pull型(自分で調べる)からpush型(教えてもらえる)への入り口としてご活用ください。
あなたに合いそうな制度をLINEでチェック
友だち追加はこちら診断結果は制度の一般的な案内であり、実際に申請できるかどうかは個別の状況によって異なります。詳しい条件は、記事本文および各制度の窓口でご確認ください。
6. 免責事項
- 本記事は、更年期障害の症状で通院・休職している方が対象になりうる代表的な公的支援制度を、一般的な情報として紹介するものです。個別の受給可否、支給額、審査結果を保証するものではありません。
- 制度の要件・自己負担額・給付内容は、加入している健康保険の種類、所得状況等によって異なります。必ず各制度の公式窓口・専門家にご確認のうえ、申請手続きを進めてください。
- 本記事は医学的な診断・治療方針に関する助言を目的としたものではありません。症状に関するご相談は、必ず通院先の医療機関にご相談ください。
- 制度の内容は法改正等により変更される場合があります。記事内の情報は最終更新日時点のものです。
出典・参考情報
- 傷病手当金:全国健康保険協会(協会けんぽ)公式サイト
- 高額療養費制度:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 医療費控除:国税庁

