ご家族が認知症と診断されたとき、あるいは介護が必要になったとき、多くの方がまず直面するのが「これからどれくらいお金がかかるのだろう」という不安だと思います。
介護保険サービスを使えば自己負担は1〜3割で済みますが、サービスを組み合わせて使ううちに、想定より負担が積み重なることも少なくありません。実は、そうした負担を軽減するための制度がいくつも用意されています。中には、医療費と介護費をまとめて軽減できる、意外と知られていない仕組みもあります。
このページでは、認知症のご家族を介護している方が対象になりうる代表的な5つの制度をご紹介します。
1. 導入:まず知っておきたい5つの公的支援制度
| 制度名 | どんなときに対象になるか | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 介護保険サービス | 要介護・要支援の認定を受けたとき | 訪問介護等を原則1〜3割の負担で利用できる |
| 高額介護サービス費 | 介護サービスの自己負担が高額になったとき | 上限額を超えた分が払い戻される |
| 高額医療・高額介護合算療養費制度 | 医療費と介護費、両方がかさんでいるとき | 2つの制度を知らないと使えない、見落としやすい仕組み |
| 成年後見制度 | 判断能力の低下で契約や財産管理が難しいとき | 2026年に使いやすくなる改正が進行中 |
| 医療費控除 | 1年間の医療・介護費用が一定額を超えたとき | 確定申告で税金の一部が還付される |
医師の視点総合診療医のひとこと
診断がついた時点で、介護保険の申請と、お金の管理を今後どうするか(日常生活自立支援事業・成年後見制度)を家族で話し合っておくと、いざというときに慌てずにすみます。要介護認定を受けている方は、市区町村の「障害者控除対象者認定」で税の控除を受けられることがあります。
― “おせっか医”になりたい大学病院総合診療科・家庭医専攻医
2. 介護保険サービス
まずは要介護認定から
65歳以上で要介護・要支援の状態にあると認定された方(40〜64歳でも特定疾病により要介護状態になった場合は対象)は、訪問介護・デイサービス・住宅改修など、さまざまな介護保険サービスを利用できます。
自己負担の目安
所得に応じて、自己負担割合は1割・2割・3割のいずれかになります。要介護度ごとに「支給限度額」が設定されており、それを超えた分は全額自己負担となる点に注意が必要です。
申請の流れ
- お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターに相談する
- 要介護認定を申請し、認定調査・主治医意見書の作成を経て認定結果を受け取る
- ケアマネジャーと相談しながら、利用するサービスを決めていく
3. 高額介護サービス費
介護費用にも「上限額」があります
介護保険サービスを利用して支払った1か月の自己負担額(1〜3割)が、所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。
自己負担上限額の目安
多くのご家庭が該当する「市町村民税課税世帯」では月44,400円、「非課税世帯」では月24,600円が目安です(所得区分により異なります)。
申請の流れ
お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に申請します。一度申請すると、以降は自動的に払い戻される自治体も多いですが、運用は自治体によって異なるため、窓口で確認しておくと安心です。
4. 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費、合算できることをご存じですか
認知症の介護をしながら、ご自身やご家族の医療費もかさんでいる——そんな世帯にこそ知っていただきたいのが、この制度です。
なぜ見落とされやすいのか
医療費は医療保険、介護費は介護保険と、それぞれ別の窓口・別の制度として案内されることが多いため、「2つを合算できる」という仕組み自体を知らないまま過ごしている方が少なくありません。
申請の流れ
加入している医療保険(協会けんぽ・国民健康保険等)の窓口に相談のうえ申請します。介護保険の自己負担額証明書が必要になる場合があります。
5. 成年後見制度
2026年、使いやすくなる制度改正が進行中です
認知症等により判断能力が低下すると、介護施設への入所契約や、預貯金の管理といった手続きが難しくなることがあります。そうした場面を支えるのが成年後見制度です。
どんな制度か
家庭裁判所が選任した後見人が、本人に代わって財産管理や、介護施設の入所契約・医療契約などの手続きを行います。弁護士や司法書士が選任される場合、後見人への報酬として月額2万〜6万円程度がかかるのが一般的です。
実務上の注意点
制度の利用を検討する際は、まずお住まいの地域の家庭裁判所や、地域包括支援センター、弁護士・司法書士等の専門家に相談することをおすすめします。
6. 医療費控除
介護費用の一部も対象になることがあります
1年間の医療費(介護費用の一部を含む)の世帯合計が一定額を超えた場合、確定申告をすることで所得控除が受けられます。
何が対象になるか
訪問看護・訪問リハビリなど、医療系の性質が強い介護保険サービスの利用料は、医療費控除の対象になる場合があります。
申請の流れ
- 1年間の医療費・対象となる介護サービスの領収書を保管しておく
- 「医療費控除の明細書」を作成する
- 確定申告の時期(原則2月16日〜3月15日)に申告する(還付申告であれば1月から可能)
困ったときの相談先
- 地域包括支援センター:介護・認知症の総合相談窓口です。何から始めればよいか迷ったときの最初の相談先です
- 社会福祉協議会:日常生活自立支援事業(お金の管理の手伝い)の窓口です
- 認知症疾患医療センター:認知症の診断や、医療・介護の相談ができます
- 成年後見の相談窓口(市区町村の中核機関など):成年後見制度の利用について相談できます
生活費が立ち行かないときは、お住まいの市区町村の自立相談支援機関や福祉事務所にもご相談ください。困ったときに使うための制度があります。
7. あなたに合いそうな制度を、LINEで確認してみませんか
ここまで5つの制度をご紹介しましたが、実際には「自分の場合、結局どれが使えるの?」と迷う方も多いと思います。要介護認定の有無や、ご本人がお金の管理や契約をできるかによって、対象になる制度の組み合わせは人によって変わってきます。
公式LINEでは、いくつかの簡単な質問にお答えいただくだけで、あなたの状況に合いそうな制度を選んでご案内しています。
- 要介護認定を受けているか(受けている/受けていない)
- ご本人がお金の管理や契約をできるか(できる/難しい)
この2つの質問にタップで答えるだけで、該当しそうな制度をLINEでお伝えします。友だち追加後、画面下のメニューの「すべて見る」→「病名から探す」から「認知症・介護」をタップすると始まります。「制度を知らないまま権利を使い逃す」ことを防ぐための、pull型(自分で調べる)からpush型(教えてもらえる)への入り口としてご活用ください。
あなたに合いそうな制度をLINEでチェック
友だち追加はこちら診断結果は制度の一般的な案内であり、実際に申請できるかどうかは個別の状況によって異なります。詳しい条件は、記事本文および各制度の窓口でご確認ください。
8. 免責事項
- 本記事は、認知症のご家族を介護している方が対象になりうる代表的な公的支援制度を、一般的な情報として紹介するものです。個別の受給可否、支給額、審査結果を保証するものではありません。
- 制度の要件・自己負担額・給付内容は、加入している医療保険・介護保険の種類、お住まいの自治体、所得状況等によって異なります。必ず各制度の公式窓口・専門家にご確認のうえ、申請手続きを進めてください。
- 成年後見制度に関する法改正の情報は2026年9月時点のものであり、今後の国会審議により内容が変更される可能性があります。
- 本記事は医学的な診断・治療方針に関する助言を目的としたものではありません。治療方針に関するご相談は、必ず主治医にご相談ください。
- 制度の内容は法改正等により変更される場合があります。記事内の情報は最終更新日時点のものです。
出典・参考情報
- 高額介護サービス費:厚生労働省、東急ウェルネス「高額介護サービス費とは」
- 高額医療・高額介護合算療養費制度:厚生労働省
- 成年後見制度:法務省、衆議院、専門家サイト「成年後見人に関する民法改正案」
- 介護保険サービス:厚生労働省、各市区町村公式サイト
- 医療費控除:国税庁

