退職前後の手続きチェックリスト|健康保険・年金・住民税・失業給付

退職前後の手続きチェックリスト

病気やけが、家族の事情、あるいは転職。理由は人それぞれですが、退職するときには、会社がまとめて引き受けてくれていた手続きが、一度に自分の手に戻ってきます。

やっかいなのは、そのほとんどに期限があることです。しかも期限は制度ごとにばらばらで、20日以内のもの、14日以内のもの、退職日当日の行動で結果が変わるものまであります。知らずに過ぎてしまうと、あとから取り返せないものもあります。

このページでは、退職の前後にやることを、期限の順に整理してご紹介します。体調を崩して退職を考えている方に関わる部分は、とくに詳しく取り上げています。

1. 退職前後の手続きと期限の一覧

手続き期限のめやす窓口
健康保険:任意継続を選ぶ退職日の翌日から20日以内協会けんぽの都道府県支部・健康保険組合
健康保険:国民健康保険に入る退職日の翌日から14日以内お住まいの市区町村
健康保険:家族の扶養に入るできるだけ早く家族の勤務先
国民年金への切り替え退職日の翌日から14日以内お住まいの市区町村
失業給付(基本手当)の手続き離職票が届き次第お住まいの地域のハローワーク
受給期間の延長申請働けない状態が30日続いた日の翌日からハローワーク
住民税の納付退職した月によって一括徴収か納付書勤務先・市区町村
確定申告(払いすぎた税金の還付)翌年2月16日〜3月15日(還付だけなら5年以内)税務署
※本記事は制度の一般的な情報を紹介するものであり、個別の可否をお約束するものではありません。期限や要件は、加入している健康保険やお住まいの自治体によって異なります。

医師の視点総合診療医のひとこと

体調を崩して「もう辞めます」とおっしゃる方に、私はいつも「退職日を決める前に、あと一度だけ話をさせてください」とお願いしています。退職してからでは選べなくなる制度がある一方で、休職してから退職した場合にだけ続く給付もあるからです。順番を変えるだけで、その後の一年の暮らしが変わることがあります。先に辞めてしまうと、もう戻せません。

― “おせっか医”になりたい大学病院総合診療科・家庭医専攻医

2. 健康保険は3つの選択肢から選ぶ

退職の翌日から、それまでの健康保険証は使えなくなります。空白の期間をつくらないために、次の3つのうちどれかを選びます。

(1) 任意継続被保険者になる

  • それまで勤務先で入っていた健康保険に、退職後も最長2年間続けて入る仕組みです。
  • 申請の期限は退職日の翌日から20日以内。この期限はほとんど延ばせません。
  • 保険料は会社負担がなくなるため、在職中の約2倍になるのが基本です。ただし上限があり、協会けんぽでは「退職時の標準報酬月額」と「加入者全体の平均(30万円)」のいずれか低いほうで計算されます。
  • 扶養している家族がいる場合、人数が増えても保険料は変わりません。家族が多い方は有利になりやすい選択肢です。
  • 2022年から、本人の申し出でいつでもやめられるようになりました。

(2) 国民健康保険に入る

  • お住まいの市区町村の窓口で、退職日の翌日から14日以内に手続きします。
  • 保険料は前年の所得をもとに計算されるため、退職直後はどうしても高く感じられます。
  • 世帯の加入人数分かかるので、家族が多いと負担が増えます。
  • 会社都合の退職や、やむを得ない理由での離職(特定受給資格者・特定理由離職者)と認められた場合、前年の給与所得を30%とみなして保険料を計算する軽減があります。申請が必要なので、必ず窓口で申し出てください。

(3) 家族の健康保険の扶養に入る

  • 保険料の負担がないため、条件に合うならいちばん軽い選択肢です。
  • 年収の見込みが130万円未満(60歳以上または障害のある方は180万円未満)で、扶養する家族の年収の2分の1未満であることが目安です。
  • 注意したいのが失業給付との関係です。基本手当の日額が3,612円以上だと、受給している間は扶養に入れないことが多くあります(130万円÷360日の計算による目安)。給付制限で待っている期間は扶養に入れる場合があります。
3つのどれが安いかは、前年の所得と扶養家族の人数で入れかわります。両方の金額を実際に出して比べるのがいちばん確実です。任意継続の保険料は協会けんぽの支部や健康保険組合、国民健康保険の保険料は市区町村の窓口で試算してもらえます。

3. 年金の切り替えと保険料の免除

  • 厚生年金をやめると、60歳未満の方は国民年金の第1号被保険者になります。市区町村の窓口で、退職日の翌日から14日以内に手続きします。
  • 配偶者が会社員・公務員で、その扶養に入れる場合は第3号被保険者となり、保険料の自己負担はありません。配偶者の勤務先を通じて手続きします。
  • 保険料の支払いが難しいときは、保険料免除・納付猶予の制度があります。前年所得で判定されますが、退職(失業)を理由とする特例では、本人の前年所得を除いて審査してもらえます。離職票や雇用保険受給資格者証の写しを添えて申請します。
  • 免除が認められた期間は、年金を受け取るために必要な期間に算入されます。障害年金や遺族年金の保険料納付要件でも「納付済み」と同じ扱いになるため、未納のまま放置するのとは大きく違います。
  • あとから納める(追納)ことも、10年以内ならできます。

4. 住民税の落とし穴

退職後にいちばん「聞いていなかった」と言われるのが住民税です。住民税は前年の所得に対してかかり、その年の6月から翌年5月にかけて納めます。つまり、収入がなくなった年にも、働いていた年の分の請求が届きます。

  • 1月から5月に退職した場合:5月分までの残額が、最後の給与や退職金から一括で差し引かれます。手取りが大きく減るので、あらかじめ金額を確認しておくと安心です。
  • 6月から12月に退職した場合:残りを自分で納める(普通徴収)か、一括徴収にするかを選べます。転職先が決まっていれば、そのまま給与天引きを続けられる場合もあります。
  • 納付が難しいときは、徴収の猶予や分割の相談ができます。市区町村の税務担当窓口で、早めに申し出てください。放置して督促に進んでしまう前の相談が大切です。

5. 失業給付と「受給期間の延長」

雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)は、「働ける状態で、仕事を探している人」が対象です。ここが、体調を崩して辞めた方にとって大切な分かれ目になります。

手続きの流れ

  1. 退職後、勤務先から離職票が届きます(10日〜2週間程度が目安)。届かないときは勤務先かハローワークに問い合わせを。
  2. お住まいの地域のハローワークで求職の申し込みをし、離職票を提出します。
  3. 7日間の待期のあと、会社都合であればすぐに支給が始まります。自己都合の場合は給付制限があり、2025年4月からは原則1か月に短縮されています(5年間で3回目以降の自己都合退職は3か月)。
  4. その後は原則4週間ごとの失業認定を受けながら受給します。

受け取れる日数は、年齢・雇用保険の加入期間・辞めた理由によって決まります。自己都合では90日〜150日、会社都合や特定理由離職者ではより長く、最長330日になることもあります。

働けない期間があるときは「受給期間の延長」を

基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年です。この1年の間に、病気・けが・妊娠・出産・育児・親族の介護などで30日以上働けない状態が続いたときは、受給期間の延長を申請できます。

  • 働けない状態が30日続いた日の翌日から申請できます。
  • 延長できるのは最長3年で、本来の1年と合わせて最大4年まで受給期間を確保できます。
  • 申請を忘れると、体調が戻ったときには期限が過ぎていた、ということが起こります。療養に入る時点で必ずハローワークに連絡してください。
健康保険の傷病手当金と、雇用保険の基本手当は同時には受け取れません。療養中は傷病手当金、働ける状態に戻ってから基本手当、という順番になります。だからこそ受給期間の延長が重要です。

6. 傷病手当金は退職後も続くことがある

在職中に健康保険の傷病手当金を受けていた方は、退職後も引き続き受け取れる場合があります(資格喪失後の継続給付)。条件は次のとおりです。

  • 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。
  • 退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること。つまり退職日に出勤しないことが必要です。

この2つ目が、実際にいちばん多くつまずくところです。最後の日だけ挨拶に出勤した、荷物を取りに行って勤務として扱われた、という理由で継続給付が受けられなくなることがあります。退職日は出勤せずに療養する——これだけは覚えておいてください。

  • 支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月までです。
  • 継続給付は、任意継続に入るかどうかとは関係なく受けられます。逆に、退職後に任意継続に入っただけの期間に新しく発病しても、傷病手当金の対象にはなりません。
  • 療養が長引きそうなときは、障害年金の対象になるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。

7. 確定申告で払いすぎた税金が戻る

  • 年の途中で退職して年末調整を受けていない場合、所得税を納めすぎていることがよくあります。翌年に確定申告をすると戻ってきます。
  • 自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は、全額が社会保険料控除の対象です。生命保険料控除や医療費控除も忘れずに。
  • 還付を受けるだけの申告(還付申告)は、翌年1月1日から5年間できます。期限に間に合わなかった年の分も、さかのぼって申告できます。
  • 退職金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、原則として確定申告は不要です。提出していないと20.42%が源泉徴収されるため、申告で取り戻します。

8. ケース別・進め方のめやす

病気やけがで退職するとき

  1. まず休職し、傷病手当金の申請をする(退職前に受給を始めておく)。
  2. 退職日は出勤しない。継続給付の条件を満たす。
  3. 健康保険は任意継続・国保・扶養を比較して選ぶ(20日/14日の期限に注意)。
  4. ハローワークで受給期間の延長を申請する。
  5. 療養が長引くなら、国民年金の免除と障害年金を検討する。

会社都合で退職したとき

  1. 離職票の離職理由の記載を必ず確認する(軽減や給付日数に直結します)。
  2. 国民健康保険の保険料軽減(前年の給与所得を30%とみなす)を申し出る。
  3. ハローワークで手続きをする。待期7日ののち、給付制限なしで受給できます。

家族の介護のために退職するとき

  1. 辞める前に、介護休業給付や勤務時間の短縮が使えないか会社に確認する。
  2. やむを得ない理由での離職として特定理由離職者に該当する可能性があります。ハローワークで相談を。
  3. 介護をしている間は働けないことも多いため、受給期間の延長を申請しておく。

困ったときの相談先

  • 加入していた健康保険(協会けんぽの都道府県支部・健康保険組合):任意継続の保険料、傷病手当金の継続給付
  • お住まいの市区町村の窓口:国民健康保険、国民年金の切り替えと免除、住民税の納付相談
  • 家族の勤務先:健康保険の扶養に入れるかどうかの確認
  • お住まいの地域のハローワーク:失業給付、受給期間の延長、離職理由の確認
  • 年金事務所・ねんきんダイヤル:国民年金の免除、障害年金の相談
  • 病院の医療ソーシャルワーカー(医療福祉相談室):療養しながらの生活全般の相談。無料です

生活費が立ち行かないときは、お住まいの市区町村の自立相談支援機関や福祉事務所にもご相談ください。困ったときに使うための制度があります。

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10. 免責事項

  • 本記事は、退職の前後に必要となる手続きを一般的な情報として紹介するものです。個別の可否や金額を保証するものではありません。
  • 期限や要件、保険料の計算方法は、加入している健康保険やお住まいの自治体によって異なります。必ず各窓口にご確認ください。
  • 本記事は医学的な診断・治療方針に関する助言を目的としたものではありません。
  • 制度の内容は法改正等により変更される場合があります。記事内の情報は最終更新日時点のものです。

出典・参考情報

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続被保険者制度」「傷病手当金」
  • 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」「国民年金保険料の免除・納付猶予」
  • 厚生労働省・ハローワークインターネットサービス「基本手当について」「受給期間の延長」
  • 厚生労働省「国民健康保険料(税)の軽減措置(非自発的失業者)」
  • 総務省「個人住民税の特別徴収・普通徴収」
  • 国税庁「退職金を受け取ったとき」「還付申告」
公開日:2026年9月24日 最終更新日:2026年9月24日
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この記事を書いた人

大学病院の総合診療科で研修中の医師(専攻医)です。外来や病棟では、使える制度を知らないまま、治療費や休職中の生活費に悩んでいる方に出会うことが少なくありません。「知らないと、使えない」をなくしたいという思いから、厚生労働省などの一次情報を確認しながら、病気とお金にかかわる制度をわかりやすく整理しています。

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