身体障害者手帳で使える制度まとめ|等級で変わるもの・変わらないもの

身体障害者手帳で使える制度まとめ

身体障害者手帳を受け取ったとき、あるいは申請を考えているとき、「これで何か手当がもらえるのだろうか」と思う方は多いと思います。

結論から言うと、手帳そのものからお金が支給されるわけではありません。手帳は、税の控除・医療費の助成・運賃の割引・福祉サービスといった、さまざまな支援への入口です。そのうえで、現金が支給される制度は別にあります。

そして、ここがいちばん誤解されやすいのですが、手帳の等級と、障害年金の等級は別物です。手帳が2級でも障害年金は非該当ということがあり、逆に手帳を持っていなくても障害年金を受け取れることがあります。

このページでは、身体障害者手帳で対象になる制度の全体像と、等級によって変わるもの・変わらないものを整理してご紹介します。

1. 手帳で使える制度の全体像

分類主なもの等級で変わるか
お金が支給される障害年金、特別障害者手当、自治体の福祉手当障害年金は別の基準/手当は障害の重さで判定
税金が軽くなる所得税・住民税の障害者控除、自動車税の減免、相続税・贈与税変わる(1・2級は「特別障害者」)
医療費・用具自立支援医療(更生医療)、重度心身障害者医療費助成、補装具費支給、日常生活用具医療費助成は変わる/補装具は変わらない
割引JR・バス・航空・タクシー、有料道路、NHK受信料、携帯電話、公共施設変わる(第1種・第2種の区分)
福祉サービス・就労障害福祉サービス(居宅介護・移動支援など)、障害者雇用枠サービスは障害支援区分という別の基準
※本記事は制度の一般的な情報を紹介するものであり、個別の可否をお約束するものではありません。特に医療費助成・手当・割引は、お住まいの自治体や事業者によって内容が大きく異なります。

医師の視点総合診療医のひとこと

診察室でよくあるのが、「手帳が2級だから障害年金も2級ですよね」という質問です。実はこの2つはまったく別の審査で、手帳の等級がそのまま年金の等級になることはありません。手帳を申請するときには、あわせて年金事務所にも相談してみてください。また、身体障害者手帳の診断書は「指定医」しか書けません。主治医が指定医でないことも珍しくないので、申請を決めたら早めに確認しておくと手戻りがありません。

― “おせっか医”になりたい大学病院総合診療科・家庭医専攻医

2. まず押さえたい「3つのものさし」

障害に関する制度には、まぎらわしい「等級」や「区分」が3つあります。どれも別の役所が、別の基準で決めているものです。ここを分けて考えられると、制度全体がぐっと見通しやすくなります。

ものさし決めるところ何に使うか
身体障害者手帳の等級(1〜6級)都道府県・政令市(指定医の診断書をもとに審査)税の控除、医療費助成、割引、補装具など
障害年金の等級(1〜3級)日本年金機構障害年金の支給額
障害支援区分(1〜6)市区町村(認定調査と審査会)障害福祉サービスの支給量
★よくある誤解:手帳の等級が重い=障害年金ももらえる、ではありません。障害年金は「日常生活や仕事にどれだけ支障が出ているか」で判断されるため、手帳の等級とずれることがよくあります。手帳が取れない程度の障害でも障害年金の対象になることがあり、その逆もあります。どちらも別々に申請が必要です。

なお、身体障害者手帳の等級は1級から6級までです。7級の障害が1つだけの場合は手帳の交付対象になりませんが、7級の障害が2つ以上重なる場合などは6級として交付対象になることがあります。

3. 等級で変わるもの・変わらないもの

等級で変わるもの

制度1・2級3級以下
所得税の障害者控除特別障害者 40万円(同居なら75万円)一般の障害者 27万円
住民税の障害者控除特別障害者 30万円(同居なら53万円)一般の障害者 26万円
重度心身障害者医療費助成対象になることが多い自治体により対象外(内部障害3級までとする例もあり)
NHK受信料の半額免除対象(世帯主かつ契約者であること)視覚・聴覚障害であれば等級を問わず対象
有料道路の割引(介護者が運転)対象(第1種に限る)本人が運転する場合のみ対象
自治体の心身障害者福祉手当対象になることが多い自治体により異なる

等級では変わらないもの

  • 障害年金:まったく別の基準で審査されます
  • 補装具費支給・日常生活用具:必要性で判断され、負担は所得に応じて決まります
  • 自立支援医療(更生医療):障害を軽くする治療が対象かどうかで決まります
  • 障害福祉サービス:障害支援区分で決まります
  • 障害者雇用枠:手帳があれば等級を問わず応募できます
「第1種・第2種」という区分は、等級だけでなく障害の種類との組み合わせで決まります。手帳の記載欄(旅客鉄道株式会社旅客運賃減額)に第1種・第2種のどちらかが書かれていますので、お手元の手帳をご確認ください。

4. お金が支給される制度

手帳とは別に、申請が必要です

障害年金

  • 病気やけがで生活や仕事に支障が続いているときに受け取れる年金です。初診日に国民年金に加入していた方は障害基礎年金(1・2級)、厚生年金なら障害厚生年金(1〜3級)になります。
  • 2026年度の障害基礎年金は、1級が年1,059,125円、2級が年847,300円(昭和31年4月2日以後に生まれた方の場合)。子の加算もあります。
  • 人工透析は開始から3か月、人工肛門・新膀胱の造設は6か月、心臓のペースメーカーや人工関節は装着した日、在宅酸素療法は開始日が障害認定日になり、初診日から1年6か月を待たずに請求できます。
  • くわしくは障害年金の申請ガイドをご覧ください。

特別障害者手当(20歳以上)

  • 精神または身体に著しい重度の障害があり、日常生活で常時特別な介護を必要とする在宅の方に支給されます。月額30,450円(2026年4月分から)。
  • 所定の診断書で判定されるため、身体障害者手帳を持っていなくても対象になる場合があります。
  • 施設に入所している方、病院などに3か月を超えて入院している方は対象外です。一方で、ショートステイ・有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅・グループホームは支給対象になります。
  • 所得制限があり、毎年8月に「所得状況届」の提出が必要です。

20歳未満の場合

  • 障害児福祉手当:重度の障害があり常時介護が必要な20歳未満の本人に、月額16,560円(2026年4月分から)。
  • 特別児童扶養手当:障害のある20歳未満の子を育てている保護者に、1級58,450円・2級38,930円(同)。
  • くわしくは子どもの病気・障害で対象になる制度をご覧ください。

自治体独自の福祉手当

「心身障害者福祉手当」などの名称で、市区町村が独自に支給しているものがあります。金額・対象等級・所得制限は自治体によってまったく異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で確認してください。

5. 税金が軽くなる制度

申告しないと適用されません

所得税・住民税の障害者控除

本人が障害者である場合のほか、障害のある配偶者や扶養親族がいる場合も、申告する方の控除になります。身体障害者手帳の1・2級は「特別障害者」にあたります。

区分所得税住民税
一般の障害者(3〜6級)27万円26万円
特別障害者(1・2級)40万円30万円
同居特別障害者75万円53万円

会社員の方は年末調整で、それ以外の方は確定申告で申告します。申告を忘れていた年があっても、5年前までさかのぼって還付を受けられます。

そのほかの税の特例

  • 自動車税・軽自動車税・自動車取得時の税の減免:本人または生計を一にする家族が運転する場合などに減免されます。要件と上限額は都道府県によって異なり、原則1人1台です。
  • 相続税の障害者控除:相続人が障害者の場合、85歳までの年数×10万円(特別障害者は20万円)が相続税額から差し引かれます。
  • 特定贈与信託:特別障害者には6,000万円まで、それ以外の特定障害者には3,000万円まで、信託による贈与が非課税になります。
  • 心身障害者扶養共済制度:保護者が亡くなったあとに年金が支給される制度で、掛金が所得控除の対象になります。

6. 医療費・用具の負担が軽くなる制度

自立支援医療(更生医療)

  • 身体障害者手帳を持つ18歳以上の方が、その障害を軽くしたり取り除いたりする治療を受けるとき、医療費の自己負担が原則1割になります(人工透析、心臓のペースメーカー植込み、人工関節置換、角膜移植など)。
  • 所得に応じた月額の負担上限も設けられます。手帳の交付日以降の治療が対象で、さかのぼっての適用はできません。
  • 事前に身体障害者更生相談所の判定を受け、指定自立支援医療機関で治療を受ける必要があります。

重度心身障害者医療費助成

  • 自治体が独自に行っている制度で、対象になると保険診療の自己負担がほぼかからなくなることがあります。負担が大きく変わるため、まず確認したい制度です。
  • 対象は多くの自治体で1・2級ですが、内部障害は3級まで、知的障害との重複なら3級までとするなど、地域差が大きい制度です。所得制限や年齢制限がある場合もあります。

補装具費支給制度

  • 義肢、装具、車いす、補聴器、義眼、歩行器などの購入・修理・借受けにかかる費用が支給されます。自己負担は原則1割で、所得に応じた月額上限があります。
  • 世帯の所得が一定以上の場合は対象外になります。

日常生活用具の給付

特殊寝台、入浴補助用具、意思伝達装置、ストーマ装具、紙おむつなど、日常生活を助ける用具の費用が助成されます。市区町村の事業のため、品目・基準額・自己負担は自治体ごとに異なります。

7. 交通機関・公共料金の割引

JR(鉄道)

区分本人だけで乗るとき介護者と一緒のとき
第1種片道100kmを超える区間の普通乗車券が5割引距離に関係なく、本人・介護者とも5割引(定期券・回数券・急行券も)
第2種片道100kmを超える区間の普通乗車券が5割引本人が12歳未満の場合に、介護者の定期券が5割引

私鉄・地下鉄・バスにも同様の割引がありますが、距離の条件がないなど、鉄道会社ごとにルールが異なります。

有料道路(高速道路)

  • 通行料金が半額になります。本人が運転する場合は等級を問わず対象、介護者が運転する場合は第1種の方が対象です。
  • 市区町村の窓口で事前登録します。登録できるのは1人につき1台です。ETCで無線通行したい場合は登録が必須ですが、登録していない車でも料金所での手帳提示により割引を受けられます。
  • 有効期限は申請日から2回目の誕生日まで(更新時は3回目の誕生日まで)。マイナンバーカードに対応したスマートフォンがあればオンラインでも申請できます。

NHK受信料

  • 全額免除:障害者手帳を持つ方がいる世帯で、世帯全員が市町村民税非課税の場合。世帯主かどうかは問いません。
  • 半額免除:視覚障害・聴覚障害の方、または身体障害者手帳1・2級の方が、世帯主かつ受信契約者である場合。課税・非課税は問いません。
  • 申請書に市区町村の証明を受けて提出します。障害福祉の窓口で手続きできます。

そのほか

航空運賃(12歳以上の第1種・第2種が対象。第1種は介護者も)、タクシー運賃の1割引、携帯電話料金の割引、美術館・動物園などの公共施設の無料または減額、駐車禁止除外指定車標章など。自治体によってはタクシー券やガソリン券の助成もあります。

困ったときの相談先

  • 市区町村の障害福祉担当窓口:手帳の申請、手当、医療費助成、補装具、日常生活用具、割引の証明
  • 相談支援事業所・基幹相談支援センター:どのサービスが使えるかを一緒に整理してもらえます
  • 年金事務所・街角の年金相談センター:障害年金の相談(手帳とは別の制度です)
  • 病院の医療ソーシャルワーカー(医療福祉相談室):入院中・通院中から相談できます。無料です
  • 身体障害者更生相談所:補装具や自立支援医療(更生医療)の判定

生活費が立ち行かないときは、お住まいの市区町村の自立相談支援機関や福祉事務所にもご相談ください。困ったときに使うための制度があります。

8. 福祉サービスと、働くための支援

障害福祉サービス

  • 居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、移動支援、短期入所、グループホーム、就労移行支援など。
  • 利用するには市区町村に申請し、障害支援区分(1〜6)の認定を受けます。手帳の等級とは別の調査で決まります。
  • 自己負担には世帯の所得に応じた月額上限があり、生活保護世帯と市町村民税非課税世帯は0円、それ以外は9,300円または37,200円です。
  • 外出の支援については移動支援で使える公的支援制度まとめもご覧ください。

働くための支援

  • 障害者雇用枠:手帳があれば等級を問わず応募できます。勤務時間や通院への配慮を前提に働けるのが特徴です。
  • 就労移行支援・就労継続支援:訓練を受けながら就職を目指す、あるいは働く場を得る福祉サービスです。
  • ハローワークの専門援助部門、障害者就業・生活支援センターで、仕事と生活の両面の相談ができます。

9. 申請の流れ

  1. 市区町村の障害福祉担当窓口で、申請書と診断書の様式を受け取る
  2. 指定医に診断書・意見書を書いてもらう(主治医が指定医とは限りません。先に確認を)
  3. 申請書・診断書・顔写真・マイナンバー確認書類を窓口に提出する
  4. 都道府県・政令市の審査を経て、手帳が交付される(おおむね1〜2か月)
  5. 手帳を受け取ったら、同じ窓口で使える制度をまとめて確認する
★障害の状態が固定してから申請するのが原則です。ただし、人工透析の導入や手足の切断など、状態が明らかに固定しているものは早い段階で申請できます。迷ったら主治医に相談してください。なお、障害の程度が変わったときは等級変更の申請ができます。

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ご案内する内容は制度の一般的な情報であり、実際に対象になるかどうかは個別の状況によって異なります。詳しい条件は、記事本文および各制度の窓口でご確認ください。

11. 免責事項

  • 本記事は、身体障害者手帳をお持ちの方が対象になりうる制度を、一般的な情報として紹介するものです。個別の可否や金額を保証するものではありません。
  • 医療費助成・福祉手当・割引は、お住まいの自治体や事業者によって内容が大きく異なります。必ず各窓口にご確認ください。
  • 本記事は医学的な診断・治療方針に関する助言を目的としたものではありません。
  • 制度の内容は法改正等により変更される場合があります。記事内の情報は最終更新日時点のものです。

出典・参考情報

  • 国税庁「障害者と税」
  • 厚生労働省「特別障害者手当について」「障害者手帳」「補装具費支給制度の概要」
  • 各自治体「特別児童扶養手当・障害児福祉手当・特別障害者手当の手当額改定(令和8年4月)」
  • JR各社「障害者割引制度のご案内」
  • NEXCO「有料道路における障がい者割引制度のご案内」
  • NHK「放送受信料の免除基準」
  • 東京都福祉局「障害福祉サービス及び障害児支援の利用者負担」
  • 日本年金機構「障害年金」
公開日:2026年10月7日 最終更新日:2026年10月7日
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この記事を書いた人

大学病院の総合診療科で研修中の医師(専攻医)です。外来や病棟では、使える制度を知らないまま、治療費や休職中の生活費に悩んでいる方に出会うことが少なくありません。「知らないと、使えない」をなくしたいという思いから、厚生労働省などの一次情報を確認しながら、病気とお金にかかわる制度をわかりやすく整理しています。

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